「頭は『本の読み方』で磨かれる」 本の読み方が変わります【書評】
茂木健一郎氏著書の「頭は『本の読み方』で磨かれる」を読みました。
脳科学者としての立場から、頭と読書の関係性を分かりやすく解説しています。
読書が脳にどんな影響を与え、人生にどれだけの影響を与えるのか。
本の選び方や読み方について、考えさせられる1冊です。
この本を読むと、本の楽しみ方がよくわかると思います。
私は毎日、通勤電車で本を読んでいますが、この本を読んでから読む本のジャンルや種類がグッと増えました。
いろいろな分野に興味が出てきたということもありますが、本を楽しみながら読むコツのようなものを教えられた気がします。
著者情報
著者の茂木健一郎氏について簡単に紹介します。
1962年 東京都出身。
東京大学理学部と法学部を卒業。
脳と心の関係について研究を行なっており、現在の研究メインテーマは「クオリア(意識)」。
テレビや雑誌などのマスメディアで積極的に活動している。
「アハ体験」や「セキュア・ベース」というテーマでテレビに出演することが多く、茂木氏を知っているという人はとても多いと思います。
たくさんの本を出版されており、特に脳と神経に関する一般読者向けの解説書を多く出すなど、脳科学の普及に力を入れられています。
本を読むとどんないいことがあるのか
本を読むことによるメリットを、「世界を見るための足場ができる」と表現しています。
本を読むとどんないいことがあるのか。
それは、読んだ本の数だけ、高いところから世界が見える、ということに尽きます。
(中略)
その足場は、読むジャンルが多ければ多いほど、より安定します。
〜p19 第1章 これが「自分の頭で考える力」をつける第一歩〜
「足場」というのは「教養」と言い換えてもいいかもしれませんね。
本をたくさん読んでいる人は、読んでいない人と比べて、物事に対する感じ方や捉え方の幅が広くなるということだと思います。
また、本を読むということは、自分とは違った人間の考え方や人生を追体験すること、と述べています。
本から得た経験を脳に蓄積することで、間接的に自分の経験を増やすことができるとのこと。
普通に生活しているだけでは絶対に経験できないようなことを、本を通じて経験する。
読書を通じて今までの自分とは違う目線ができていくことが、本を読むメリットとしています。
どんな本の中にも、自分の知らない情報があるものですし、自分とは違う意見がある。
それに出会うことで、感動したり、違和感を覚えたり、これはどういう意味なのだろう、と考えたりする。
それが「自分の枠を広げる」ということなのです。
〜p28 第1章 これが「自分の頭で考える力」をつける第一歩〜
また、人の知性というものは「どれだけたくさんの人の立場で考えることができるか」で決まると書いています。
たくさん物事を知っていればいいというわけでなく、自分以外の誰かの目線に立つというスキルが人間にとって重要としています。
そして、このスキルは「読書」によって培われるとし、積極的読書を推奨しています。
本が持つ言葉の重み
インターネットやSNSが普及した現代では、いちいち本を買って読まなくても、パソコンでほとんどの情報を手に入れることができます。
しかし、ネット上に溢れている文章と、紙の書籍として出されているものとでは、言葉の重みが全く違います。
考えてみれば当然で、本の文章は著者が練りに練って、編集者の手も校閲者の手も入れて、ようやく完成します。
一方、ネット上の文章は基本的に読み流すものという前提で書かれていることが多く、本と比べてかなり気楽さが違います。
茂木氏はブログやSNSなどの文章と、本として世に出される文章について、以下のように述べています。
ぼくはブログやSNSのニュース記事なども否定はしませんが、それらと百年後、二百年後まで残りうる文章、一つの作品としてずっと読み継がれる文章とは、おのずから意味合いが違ってくるのだと思います。
そして、それに向き合ったときに脳から引き出される力も、まったく変わってきます。
〜p33 第1章 これが「自分の頭で考える力」をつける第一歩〜
ネット上の本を気楽に読むのと比べて、1冊の本を読み上げるというのは圧倒的に難易度が高いとも述べています。
しかし、だからこそ本を読むことは脳を鍛えることにつながり、言葉の筋力を磨くことができるとしています。
これはとても考えさせられる内容で、私自身、インターネットが普及してきたここ十数年、確実に本を読むという頻度が減っていました。
代わりにネットで情報を集めることが増えてきたのですが、言葉をしっかりと噛み砕くことをせず、サラサラと読み流して頭に入れたようなフリをしていることが多くなっていると感じます。
なので、久しぶりに本を1冊読み通すと、それだけで脳がドッと疲れた感覚を受けます。
学生の頃はもっと楽に本を読めていた気がするのですが・・・
年齢による影響もあるでしょうが、やはりネットの普及により、言葉の筋力が衰えていることも原因の一つなのでしょうね。
しばらくは本に悪戦苦闘しながらも、脳を鍛えることにしたいと思います。
情熱は何物にも勝る
「オタク」の持つ情熱を茂木氏はとても重要視しています。
「優等生」ではなく「オタク」を目指せ!と、かなり刺激的なことを書かれています。
「オタク」というと世間では「得体の知れない異星人」扱いされることが多く、オタクでない人から見ると奇妙で、偏っていて、理解できないものになりがちです。
しかし、茂木氏は次のように述べています。
しかし、オタクの人はみんな、自信を持って「情熱」だけはあると言えるのです。
「オタク」とは対象が何であれ、まわりが驚くくらいの時間やお金、エネルギーといったリソースを注げる人です。
〜p61-62 第2章 こんな「教養のある人」こそが強い〜
オタクのように好きなことにのめり込んでいくうちに、芋づる式にさまざまな素養が身についていくとのこと。
そして、そのためには自分の中に「情熱」を持っていることがとても大切としています。
最近の教育現場ではまんべんなく、バランスよく勉強をすることが評価されることが多いです。
しかし、何か1つでもいいので、自分が本当に好きなことにのめり込んでしまうことが、充実した学びを得られる一番の近道だとしています。
これからは自分が持っている「情熱」の気持ちをできる限り尊重してあげたいと思います。
周りの目や周囲に流されて、自分の情熱を消してしまうことが一番もったいないですからね。
エッセンスだけでは人は変われない
今も昔も「実用書」は本の大人気ジャンルです。
「〜の始め方」や「〜をして生きるには」などといった、「これを読めば自分は変われる!」と思わせる本は無数にあります。
茂木氏は実用書について次のように述べています。
実用書は、エッセンスを抽出したものです。
(中略)
エッセンスとして抽出されたものは、確かに至宝です。
けれどもそこからさらに進んで、自分でそれを体系化し、みずからの足でビジネス書に書かれているような成功をたどるためには、やはり具体的な「一の積み重ね」がいるのです。
〜p94-95 第2章 こんな「教養のある人」こそが強い〜
これは激しく同意です。
本を読んだから書いている内容がそのまま実現するはずもなく、最終的には自分の手で人生を切り開いていくしかありません。
本はそのヒントやアドバイスをくれるだけです。
例えば私だったら、次のような悩みを持って本を買うことが多いです。
- 囲碁が強くなりたい・・・
- ブログでアクセスを増やして収益化させたい・・・
- 成功談を読んで自分も成功したい・・・
煩悩の塊ですね笑
これらのテーマについての実用書は、本屋に行けばたくさん売っています。
もうありすぎてどれを買っていいのか悩むくらい。
しかし、本に書いている内容をやみくもに模倣していてもなかなかうまくいきません。
本の通りにするだけでうまくいくなら、世の中成功者だらけになりますからね。
うまくいかない理由は単純で、読者一人一人の背景や環境が違うから、です。
人生の前提条件が違うので、本に書いているエッセンスをそのまま使ってもダメということですね。
じゃあどうすればいいのかというと、エッセンスを自分なりに噛み砕いて落とし込み、自分の置かれている環境に合わせて利用することです。
たくさんの本を読んでいる人は、エッセンスをたくさん持っていることが強みで、どんな状況に陥っても大量に持っているエッセンス集の中から状況に応じて対応策を練り上げることができます。
実用書に載っている内容はあくまで参考として、利用できるものは利用するくらいの気持ちで読んだ方がいいですね。
本で得た知識を人生でどう使うのか
脳科学者の目線で、本で得た知識をどのように自分のものにするのか書かれています。
この本の中では7つのポイントに分けて、詳しく解説されています。
気になる方はぜひ本書を読んでみてください。
次の3つなどは、特に共感する内容でした。
- ジャンルは問わず、雑食、乱読が大事
- 「複数」を「同時進行」で
- 「いい文章」と「悪い文章」を知る
順に紹介していきます。
ジャンルは問わず、雑食、乱読が大事
脳には雑食、乱読が良いと書かれています。
どの本がどう役に立つかということはわからないけれど、たくさん本を読むと、それが腐葉土のように発酵して脳の中にいい土壌ができる。
千冊読んだ人、一万冊読んだ人、というのは、それだけの養分が脳の中に蓄えられるから、とてもおいしい果物ができるということです。
あなたもたくさん本を読んで人生の土をつくり、素敵な花を咲かせませんか?
〜p158 第4章 知識を吸収し、人生に活かす技法〜
読書をすると決めても、どんな本を読めばいいのか悩むことが多いのですが、ジャンルは問わず、自分が気になる本を読めばいいということですね。
知識のインプットという目的がありますが、それだけではアウトプットしなければとプレッシャーになってしまうので、まずは知的好奇心を満たすところから始めてみればいいと思います。
「複数」を「同時進行」で
茂木氏は1冊1冊を直線的に通読する必要はないと述べています。
「飽き性」を自覚している人は、複数の本を同時並行で読んでみてはいかがでしょうか。
「あんまり気が乗らないな」という本を、何日もかけて最後まで読みとおさなくてもいい。
そんなときは、さっさと別の本に移ってまた10ページ読む。
「その日の気分」というものもあるでしょうし、また気が向いたら前の本に戻ってくる。
〜p165-166 第4章 知識を吸収し、人生に活かす技法〜
確かに実際に本を読んでいても、「今日はどうも気分が乗らない」と感じる日があります。
そうなった時のために、1冊自分が好きなジャンルの本を持ち歩いておけばよさそうですね。
複数の本を同時進行で読むメリットについても書かれており、要約すると「自分の判断力が身につく」ということです。
1冊の本から得た知識だけでは、どうしても偏った知識になってしまいます。
できるだけたくさんの本を読むことで、世の中にはいろいろな考え方があるということを知るのが重要としています。
「いい文章」と「悪い文章」を知る
言葉には経済価値があると書かれています。
コピーライターという仕事がありますし、今ではブログなどでもお金を得ることができるようになっています。
実際にお金に換えるかどうかはともかく、この例から言えるのは、確実に「言葉には経済価値がある」ということです。
いい文章は、ありとあらゆるスキルと比べても、圧倒的なお金を生む力がある。
たかが文章、とあなどらないでほしいのです。
〜p192 第4章 知識を吸収し、人生に活かす技法〜
いい文章を知るためにはやはり読書が欠かせません。
個人的な「好き・嫌い」ではなく、客観的に見て優れた文章かどうかを見分ける力を身につけるべきだとしています。
本の中では、夏目漱石を例にしています。
夏目漱石は日本の偉大な文豪と言われていますが、その文章を読んで素直に「確かにそうだね」と思えるかどうか。
私は夏目漱石の文章をほとんど読んだことがないので、今度読んで確かめてみたいと思います。
「誰もが認める美文」「人に伝わる名文」というものが、どういう表現なのか知ることができるのも読書の大きな価値ですね。
まとめ
読書を通じて人はどう成長できるのか。
本の読み方、楽しみ方、活かし方がわかりやすくまとまっている本でした。
第5章では、茂木氏が一生の使える財産として10冊を紹介されています。
有名どころばかりですが、読んだことがない本も多いので、機会を作って読んでみます。
今日からまた猛烈に本を読みたいと思います!
「本なんて必要ない」と思っている人は、いずれ人生の深みや喜びに差がついて、絶対に後悔することになる。
〜p5-6 はじめに〜
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次の記事でまたお会いしましょう!
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