【囲碁】英才特別採用推薦棋士という制度について不安を感じる理由
今日は囲碁の英才特別採用推薦棋士という制度について書きたいと思います。
最近、マスコミでも大きく取り上げられている仲邑菫さん(9)。
4月から囲碁のプロ棋士としてデビューすることが決まり、史上最年少プロ棋士となります。
藤井聡太七段による将棋ブームに負けじと、囲碁界もビッグニュースを持ってきた感じですね。
菫さんパワーで囲碁ブームがやってくるのか、とても楽しみです。
菫さん個人の話はマスコミや他の方のブログでも大きく取り上げられているので、そちらにご覧いただくとして・・・
今回の記事は菫さんがプロ入りした「英才特別採用推薦棋士」という制度について、私個人が思うところを書きたいと思います。
先に結論を書くと、私は個人的にこの制度をあまりよく感じておらず、何とも言えない不安を感じています。
簡単に書くと、プロになるという人生を決める選択を他人の推薦で決めてもいいの?という不安です。
しかも原則小学生とのことで、社会のこともよく分からない状態で、大人たちの言われるがままにプロになってしまうような気がしてならないという点も大きな不安です。
もう少し詳しく理由を書いていきますね。
英才特別採用推薦棋士とは?
まずは英才特別採用推薦棋士という制度について確認しておきましょう。
詳細は日本棋院の公式ページを参照ください。
ざっくり簡単に言うと、
・プロ棋士2人以上の推薦と、7大タイトル保持棋士など6人による審査を行う
・審査で3分の2以上の賛成があると認定される
・採用年齢は原則、小学生
という感じです。
原則、小学生の子を現役のプロ棋士が推薦し、タイトル保持者などの権威がある棋士が賛成すると棋士として認定される、ということですね。
一応、試験碁というのもあるようです。
この制度が誕生した理由
今の日本囲碁界は中国・韓国に圧倒されており、世界戦では10年以上3番手に甘んじています。
五冠を保持しており、現在の日本最強棋士である井山裕太九段でも、世界ランキングを見ると50番前後という状況なのです。
なぜここまで中国・韓国が強いのか。
もっとも大きな理由は、この2国は国を挙げて才能がある子供に対して囲碁の英才教育を行っているという点があげられます。
その力の入れ具合は日本の比ではなく、国中から集められた才能ある子供たちがプロを目指して熾烈な競争を繰り広げています。
一方、日本の囲碁普及率を考えると、圧倒的に認知度が低く、ルールを知っている人を探すだけでも一苦労するような現状です。
大人世代がそういう状態なので、子供世代に囲碁が爆発的に広まることは考えにくく、このまま行っても日本が世界のトップとなるのはかなり厳しいでしょう。
こうした世界の勢力状況を考慮した日本棋院が考えた制度が、この記事のテーマ「英才特別採用推薦棋士」という制度なのです。
簡単に言うと、才能がある子を早くからプロの世界に入れて、囲碁界全体で育てていこう!ということですね。
普通の棋士とどう違うの?
今まではプロ棋士になるためには特別な例外を除いて、プロ試験を通過するしか方法はありませんでした。
東京・大阪・名古屋・女流といくつかのグループ分けはありますが、プロを目指す才能溢れる子供たちが総当たり戦で対局を行い、上位数名がプロになることができます。
今は若干制度が変わっていますが、漫画のヒカルの碁でプロ試験の厳しさを知っているという人も多いかもしれません。
また、プロ試験は誰でも受けることができるわけではありません。
「院生」というプロの養成機関に入っている子たちであれば、院生内での競争に勝ち抜き、上位に入った子がプロ試験に出ることができます。
「外来」として一般のアマチュアから申し込む場合は、厳しい外来予選を勝ち上がった人だけがプロ試験の本線に進むことができるのです。
プロという狭き門を巡って、とてつもなく熾烈な競争が行われ、技術だけではなく精神的にも体力的にも優れた人だけがプロになることができます。
英才特別採用推薦棋士の仕組みは上で書いた通りなので割愛しますね。
採用方法という観点で見ると、「他者との競争の有無」が大きく違います。
今までのプロ棋士は多かれ少なかれ、プロ試験の競争を勝ち抜き、他者を蹴落としてプロになっています。
対して英才特別採用推薦棋士という制度は、他者との競争がありません。
試験碁はありますが、あくまで推薦での入段なので他者とプロ試験を戦い、自分の力で勝ち取った棋士の座、というわけではないです。
英才特別採用推薦棋士という制度に感じる不安
さて、ここからが本題です。
冒頭でも書きましたが、私はこの英才特別採用推薦棋士という制度をあまり良いとは感じていません。
その理由は大きく2つ。
・現役プロ棋士の推薦という制度
・原則、小学生という縛り
詳しく書いていきます。
自分の意思で職業を決めていないのでは?
上でも少し書きましたが、今までのプロ棋士は「プロ試験」という形で、他者と競争を行い自分の力で勝ち抜いてプロという地位を手に入れています。
対して英才特別採用推薦棋士という制度は、プロ試験を勝ち抜いたわけではなく、「推薦」という形で入段することになります。
ここが私が違和感を感じているところでして、「プロ棋士」という自分の職業を他人の推薦で決める、という点がどうも納得できないのです。
そして、推薦対象の子が原則小学生という点も気になります。
社会のことや他の世界をほとんど知らない小学生を、大人たちの都合で囲碁棋士に推薦し、プロにしてしまう。
それがとても怖いことのように感じてしまうのです。
今までのプロといえば、院生も外来も自分の意思でプロ試験を受け、他者との競争の中でプロの座を掴み取ってきました。
プロ試験の過程では、自分に負けて夢が叶わなかった人を直に見ることがあるかもしれません。
そうした勝負の厳しさ、社会の厳しさを身をもって体験した上で、プロになっていきます。
プロ試験を受けるのは自分の意思なので、「囲碁のプロ」という職業を選ぶのも、もちろん自分の意思でしょう。
それであれば10代前半というまだ子供でプロ棋士になるというのも問題ないかなと思います。
プロになるということを決めたのは自分ですし、プロになれたのも自分の力ですから。
しかし、英才特別採用推薦棋士は他人の推薦でプロ棋士になります。
もちろん、本人の意思は確認し、了承をもらった上で推薦しているとは思います。
しかし、相手はまだ小学生の子供です。
囲碁のプロになるということの本当の意味を完全に理解することは難しいでしょう。
いくら大人がプロの厳しさや周囲からのプレッシャーの存在、勝負の世界について説明してもほとんど理解できないのではないでしょうか。
まだ院生やプロ試験で競争を実体験していれば違うのでしょうが、それもありませんからね。
小学生に大人の社会をイメージしろと言っても無理があるでしょう。
そして、もちろんのことですがその子には囲碁のプロ以外にも職業選択の自由という権利があります。
本来であれば、中学高校と年齢を重ねていく中で、社会について勉強し、自分のなりたい職業を選んでいきます。
前述したように成長していく過程で、自分の意思で囲碁のプロになりたいと思い、プロ試験を受けるのは自由だと思います。
しかし、英才特別採用推薦棋士制度は、当然保証されるべき「職業選択の自由」が軽視されているように思えて仕方ありません。
これが、私が英才特別採用推薦棋士という制度を初めて聞いた時から感じていた違和感です。
まとめ
英才特別採用推薦棋士という制度について、私個人が感じる違和感、不安について書きました。
今更こんなことを書いても、どうにもならないことは分かっていますが、モヤモヤしたままなのは嫌なので、思い切って吐き出してみました。
気分はスッキリです(笑)
ネットやSNSを見ていると、英才特別採用推薦棋士制度について好感を持っている方が多いのかなと感じています。
確かに話題性も抜群ですし、囲碁界が盛り上がっていくきっかけになりそうな予感がします。
囲碁界の普及や発展のために、日本棋院がいろいろ考えて行動していることは素晴らしいと思います。
ただ、私個人としてはこの制度にどうしても違和感を感じてしまいます。
英才特別採用推薦棋士については今後も注目していきたいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次の記事でまたお会いしましょう!
広告
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません