タグ: 棋譜感想

  • 囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その10

    囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その10

    その7その8その9に引き続き、中川順節との4局目です。

     

    ここまでは秀策が3連勝で、内容的にも圧倒しています。

    2子ではとてもじゃないが手に負えないと順節も痛感していたかもしれません。

     

    秀策が4連勝をかざるのか、それとも順節が意地の1勝を返すのか!?

    早速対局を見ていきましょう!

     

     

    秀策強し・・・

    この碁も秀策の完勝でした。

     

    前局では簡明に打って手堅く勝ち切った印象でしたが、この碁は相手を力でねじ伏せる勝ち方でした。

    置き石の力に頼らず、ガップリ組み合っても力負けしていないことを証明しましたね。

     

    秀策の代名詞である「読みの鋭さ」や「手の厳しさ」というのは10歳ちょっとの少年時代から十分片鱗を見せているように感じました。

    特にこの碁の内容はとても力強く、相手を一気に叩き潰した感じです。

    中盤での手筋の応酬など、とても勉強になる内容でした。

     

    プロの碁は難しくて、棋譜並べをしても分からないという声をよく聞きます。

    確かに私も分からないことばかりです。

     

    しかし何度も並べていることで、何となくですが「こういう目的でここに打ったのかな?」とか「この場面ではこういう風に打つのが良いのか」など、自分なりの発見が出てきます。

    この発見が言い換えると成長ということです。

     

    自分の知らない考え方や打ち方(手筋)を吸収することで棋力は向上していきます。

     

    そして吸収した内容を実戦で試してみる。

    もちろん始めは上手くいかないことばかりでしょう。

    しかし失敗した内容を自分なりに反省し、どこが悪かったのかを認識することで同じ失敗を繰り返さないようにできますよね。

     

    棋譜並べでプロの考え方や打ち方を吸収する → 実戦で試してみる → 結果を振り返る

     

    このサイクルを繰り返すことで確実に強くなっていきます。

     

    棋譜並べが面倒だと思っている方も、是非1度やってみてください。

    プロの碁であればどれを並べても大差はないです。

    気に入った碁があればそれを何度も繰り返し並べてみるのも良い勉強法だと思います。

     

    話がだいぶ逸れちゃいましたね汗

     

     

    秀策に話を戻しまして・・・

    この碁に勝って秀策が圧巻の内容で順節に4連勝しました。

    本因坊家に神童がいるという噂は全国に轟いたことだと思います。

     

    秀策はこの碁の後、大阪を離れ江戸に戻ったと言われています。

    当時はこうした地方への移動の際に、各地の強豪たちと対局することが多かったようです。

     

    ネットなんて無い時代ですからね。

    地方にいる棋士からすれば江戸のトップ棋士と対局できる機会なんて、人生で1度あるかないかという世界です。

    そう考えると、今よりもはるかに1局1局を大切に打っていたんでしょうね。

     

    当時の棋士たちが持っていた囲碁に対する姿勢、熱意というのは忘れないようにしたいと思います。

     

    なんか、脱線ばかりの記事になってしまいました笑

     

     

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  • 囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その9

    囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その9

    その7、その8に引き続き、中川順節との3局目です。

     

    ここまで2子局とはいえ、秀策が完勝に近い内容で2連勝しています。

    順節はこの時五段、秀策は初段。

    2子の手合割りは妥当なのですが、内容を見る限りでは既に互先でもいい勝負なのでは無いかと感じてしまいます。

     

    順節としても何とか1勝を返したいところですが、果たして結果はどうだったのでしょうか。

    それでは対局を見ていきましょう!

     

     

    この碁も秀策の完勝でした。

    前局以上に簡明に打ち進め、白に全くといっていいほどチャンスを与えなかったように思います。

     

    相手にチャンスを与えない、と文章で書けば簡単なように見えますが、実際はとても難しいことです。

    常に形勢判断をしながら、相手のチャンスの芽を1つ1つ摘み取っていかなければいけません。

     

    囲碁は優勢になることよりも、優勢になってから勝ち切るまでの方がはるかに難しいと言われています。

    劣勢になった相手は失うものがありませんので、ドンドン勝負手を放ってきます。

    それに対して、優勢の方は1つでも受け方や判断を間違うと一気に逆転されてしまいますからね。

     

    対局に勝利するというのは大変なことだと改めて思います。

     

    この碁は秀策少年が相手の必死の追撃も振り切り、しっかりと勝ち切る強さを見せつけました。

    順節もこの内容には戦意喪失したかもしれませんね。

     

     

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  • 囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その8

    囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その8

    中川順節との2局目です。

     

    その7で紹介した順節との1局目では秀策少年の圧巻の打ち回しを見せました。

    順節も気合いを入れ直してこの2局目に望んだことだと思います。

     

    それでは対局を見ていきましょう!

     

     

    秀策が手厚く押し切った印象の1局でした。

     

    序盤から黒がペースを掴み、白の苦しい進行が続いたように思います。

    優勢になった時の秀策の簡明な打ち方は、この少年時代から健在ですね。

     

    しかし順節もさすがなもので、簡単には土俵を割らず粘り強く食い下がります。

    最後は大石同士の眼がなくなり、コウで勝負が決まる局面までもつれ込みました。

     

    こう書くと勝負がどちらに転んでもおかしくないように感じますが、実際は黒の秀策の方に余裕がある戦いだったと思います。

    秀策はコウ争いになっても勝算があると見てこの展開に持ち込んだのではないでしょうか。

    真相は分かりませんが、実際に並べてみると秀策の落ち着いた打ち回しがそれを物語っているように感じます。

     

    部分での読みの深さ、全局を見渡す大局観、どれを取っても10歳そこそこの少年とは思えない打ち振りでした。

     

    順節も1局目は子供のまぐれ勝ちだと思ったかもしれません。

    しかし、この2局目でも完勝に近い勝ち方をされたことで、秀策の才能を改めて認め、驚いたことだと思います。

     

     

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  • 囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その7

    囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その7

    井上門の中川順節との2子局です。

    順節は1804年に江戸で生まれました。

    40歳前に大阪へ移り住み、関西碁界の普及に大きく貢献したことで広く知られています。

     

    この碁は因島に帰郷していた秀策が江戸に帰る途中、大阪に立ち寄った際に打たれた対局です。

    秀策はこの時12歳。

    順節とはこの時2子で4局打っているのですが、秀策は圧倒的な強さを見せつけました。

    天才少年の名声はますます広がったことだと思います。

     

    それではさっそく対局を見ていきましょう!

     

     

    秀策の厳しく力強い攻めが冴え渡った1局でした。

     

    序盤は大斜定石という難解な大型定石から始まりました。

    順節が秀策少年の力を試す意味合いもあったのかもしれません。

    大きな変化になりましたが、ほぼ互角の分かれになったと思います。

     

    その後戦いの場は右辺に移りますが、そこで秀策は一気に力を出します。

    見事な打ち回しで一方的な展開に持ち込み、そのまま大石を召し捕って押し切りました。

     

    順節に悪手があったのだと思いますが、私にははっきりした敗因は分かりません。

    元々が2子局なので黒が優勢になるのは当然といえば当然です。

    しかし、互先でも秀策は決して負けていないのではないかと思わせる内容でした。

     

    秀策の力強い打ち回しはとても勉強になると思いますので、ぜひ並べてみて下さい!

     

     

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  • 囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その6

    囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その6

    その5に続いて本因坊秀和との3子局です。

     

    秀和は早見え早打ちだったと伝えられています。

    棋風は堅実明快でアマチュアでも分かりやすい碁だと言われていますね。

    秀策と並んで棋譜並べで勉強するには最高の棋士だと思います。

     

    それでは対局を見ていきましょう!

     

     

    秀和の打ち回しが素晴らしい1局でした。

     

    序盤からコウを使って巧みに大場に回り、3子の差を着実に詰めています。

    中盤には大コウを仕掛け、一気に地合いで追いつきました。

     

    秀策も必死に粘って食い下がりますが、地力の差か最後は秀和が1目残しました。

     

    秀策のどの打ち方が悪かったのか、私には分かりませんが、白の打ち方は本当に参考になるところが多くて勉強になります。

    何度も並べて一手一手の意味をしっかりと理解できるようになりたいです。

     

     

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  • 囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その5

    囲碁の棋譜【本因坊秀策】感想を書いてみる〜その5

    江戸時代を代表する大棋士、本因坊秀和の登場です!

    江戸後期から明治にかけて活躍した囲碁棋士で、14世本因坊です。

     

    囲碁四哲の一人とされ、名人にはなれなかったものの実力は名人にも劣らないと言われています。

    ちなみに囲碁四哲の残りの3人は本因坊元丈、安井知得、玄庵因碩です。

     

    秀策ともたくさん対局していますので、これからたくさん紹介することになると思います。

    この対局当時は秀策11歳、秀和20歳で、これからの本因坊家を担う2人の天才による対局になります。

     

     

    本当に大熱戦でした。

     

    伊藤松和との3子局でもそうでしたが、やはり中盤までは白がうまく打ち回して差を詰めています。

    しかし秀策はあっさり土俵を割らずしっかりとリードを守れているところがすごいです。

    相手はあの秀和ですからね・・・

     

    この碁は秀和が形勢不利と感じて中盤に勝負手を放って大コウの大事件が起きました。

    普通こんな乱戦に持ち込まれると上手が一気に押し切ってしまうものですが、11歳の秀策少年は動じずにキッチリ1目勝ちをおさめています。

    本当にすごいの一言で、秀策が天才と言われる理由がなんとなくわかった気がします。

     

    秀和の勝ちにこだわった本気の打ち回しと、それを真正面から受け止めた秀策の技。

    本当に見ごたえたっぷりで、何度並べても勉強になる1局です。

     

     

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  • 囲碁の棋譜感想シリーズ【本因坊秀策】その4

    囲碁の棋譜感想シリーズ【本因坊秀策】その4

    本因坊家の大先輩、伊藤松次郎(後の伊藤松和)との3子局です。

     

    伊藤松次郎は天保四傑の1人で江戸時代を代表する棋士の1人です。

    本因坊秀策の御城碁19連勝はとても有名ですが、その中で最も苦戦した1局はこの伊藤松和との1局と言われています。

     

    ちなみに天保四傑の残りの3人は安井算知、太田雄蔵、坂口仙得です。

    どの棋士も秀策と数多く対局していますので、今後何度も出てくる名前になると思います。

     

     

    3子局だからといって秀策はかたくなることなく、ドンドン戦いを挑んでいます。

    しかし、さすがに中盤の戦闘力にはまだ差があるのか、中盤では白がかなり追いついていたように思います。

     

    普通、上手に追いつかれるとそこからズルズルと負けになってしまうことが多いのですが、秀策はそこから崩れませんでした。

    コウが絡んだ終盤の攻防も一歩も引かず戦い抜き、結果黒勝ちまで持っていったのは素晴らしいの一言です。

     

    下辺から中央の戦いにおける白の打ち回しと、そこから終盤への黒の必死の粘り。

    見ごたえたっぷりの1局でした。

     

    一手一手の意味はとても難しいですが、1局の流れを感じることができればそれだけでも勉強になると思います。

    この対局は是非実際の碁盤に並べて流れを感じてもらいたい1局です!

     

     

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